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都健康長寿医療センター 井原 涼子 医師に聞く レカネマブ発売から3カ月(前編)
  • 2024/04/09
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認知症薬新時代の第一歩 患者に合った選択可能な時代へ

認知症のアルツハイマー病新薬「レカネマブ」が保険適用されてから3カ月。この薬を使う医療機関が全国的に増えている。東京都内では昨年12月に東京都健康長寿医療センターで投与が始まって以降、投与可能な医療機関は24カ所に上る(2月20日時点)。

患者の期待も高い一方で、自己負担は高額になり、2週間に1度の通院による投与、設備や体制が整っている医療機関のみでの投与など、現状では患者にとって身近な薬とは言えない。ただ、都健康長寿医療センター脳神経内科医長で、長年認知症薬の治験にも関わってきた井原涼子医師は「この薬が登場した意義は大きい」と話す。

昨年12月20日に、医療保険が適用された「レカネマブ」。その5日後、都健康長寿医療センターでは、軽度認知障害(MCI)と診断された都内在住の女性への投与を行った。

レカネマブは、日本の製薬大手エーザイとアメリカのバイオジェンが共同開発した認知症薬。治験では1年半の投与で、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβを除去し、病気の進行スピードを27%抑制する効果が確認されている。対象はアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)か軽症の認知症。2週間に1回の点滴投与を、原則1年半続ける。

「既存薬のアリセプトは残された神経細胞の活性化を促す薬で、結果的には認知機能低下のスピードは変わりません。レカネマブがそれと根本的に異なるのは、アルツハイマー型認知症が始まる一番最初のステップであるアミロイドβの蓄積に働きかけて病気の進行の傾きを緩やかにする点です」

さらに、これまでは治療薬がなかった軽度認知障害を対象とする薬である点も新しいと井原医長は説明する。

通院は2週に1度

都健康長寿医療センターでレカネマブの投与を希望する場合は、まず電話かインターネットで外来受診を予約する。その際に2週間に1度投薬のため通院が必要なことや、軽度の認知症が対象などの説明が行われる。

初診は物忘れ外来か脳神経内科を受診。かかりつけ医の紹介状が必要だ。MMSE検査や、採血、CTスキャンなどを行い、重症度が合致し、アルツハイマー型以外の認知症または軽度認知障害でないことを確認できたら専門外来を受診する。

後編へ続く

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